軽い気持ちのポイ捨てで拘留72時間、数十万円の罰金も! 絶対にやってはいけない不法投棄
定期的に新聞やテレビを賑わす不法投棄。ちょっとしたゴミならいいか、と軽い気持ちでポイ捨てすると、高額の罰金や、場合によっては逮捕されるケースもあります。
目次
不法投棄とは
今回はゴミの不法投棄について、罰則や過去の事例、自治体の取り組みを紹介していきます。ちょっとぐらいならいいか、引っ越しで仕方なく…という自分の都合でやってしまうと取り返しがつかなくなることになります。絶対に不法投棄をしてはいけません、という強い警告を込めて詳しく説明していこうと思います。
まずは不法投棄とは、日本の法律、法令に違反した処分方法で廃棄物を捨てることです。不法投棄というと、産廃業者などが医療廃棄物を捨てたり、山などに大量のゴミを廃棄するようなイメージが強いと思いますが、ちょっとした家庭ゴミのポイ捨てでも見つかると厳罰に処される場合があります。絶対にやめましょう。
不法投棄の罰則
では実際にどれくらい重い罰則が下されるのでしょうか。廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)の第16条に「何人もみだりに廃棄物を捨ててはならない」と規定されています。罰則もあり、同法25条で、「五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 」と規定されています。法人が不法投棄を行った場合は「三億円以下の罰金刑」と規定されています。
パッと見ただけでもかなり厳しい罰則ですね。個人の不法投棄で懲役になるケースはほとんどありませんので、ほとんどが罰金の支払いということになります。さすがに1000万円ということはないようですが、10~50万円くらいは普通に科されるようです。拘留も72時間ですから、3日は身動きが取れません。職場や自宅にも当然ばれます。タバコのポイ捨てもそうですが、過去に比べてどんどん罰則が厳しくなってきています。
法令整備・改正の歴史
ここからはゴミの処分に関する法整備について見てみたいと思います。廃棄物処理法は67年に制定された公害対策基本法をうけ、1970年に制定されました。全国的な光化学スモッグなどの大気汚染公害が問題となり、ごみ焼却場自体が公害発生源として問題になっていました。世論も高まり、いわゆる「公害国会」において清掃法(1954年制定)を全面的に改める形で廃棄物の処理及び清掃に関する法律が成立しました。その後1976年に改正され、「措置命令規定の創設」、「再委託の禁止」、「処理記録の保存」、「敷地内埋立禁止」などが定められました。
90年代には特別管理廃棄物制度(マニフェスト制度)が導入されました。マニフェスト伝票を記入することで廃棄物処理の流れを確認できるようにし、不法投棄などを未然に防ぐためのものです。政治用語などのマニフェスト(選挙公約)とは違い、もともとは積荷目録という意味の英語だそうです。その後も廃棄物の不法投棄の罰則強化のための法改正は繰り返され、石綿(アスベスト)含有廃棄物に係る処理基準なども定められました。
刑事事件となった不法投棄の実例
毎年のように改正されている廃棄物処理法ですが、その原因として、過去にいくつもの悪質な事件がありました。ここからは実際にあった不法投棄の事例について見てみましょう。
1香川県豊島/産業廃棄物不法投棄事件
戦後最大の不法投棄事件と言われているのがこちら。小豆島に隣接する自然豊かな豊島(てしま)が舞台で、観光開発会社が1975年から16年間、この島に不法投棄を繰り返し、1990年になってようやく兵庫県警に摘発されました。その間住民も反対運動などをして闘っていましたが、結局調停は2000年までかかりました。
不法投棄された廃棄物は92万トンにもおよび、2017年にすべての廃棄物の処理が完了したと思われましたが、新たに汚泥が見つかったり、地下水の浄化作業なども残っているためあと数年は終わらないそうです。2017年時点での費用は770億円にもなったということです。
2青森・岩手県境/産業廃棄物不法投棄事件
こちらの事件は不法投棄された廃棄物量が岩手県、青森県合わせて合計約100万立方メートル以上にもなる。香川県豊島の不法投棄事件をはるかに上回る日本最大規模の不法投棄事件です。不法投棄された廃棄物の多くは 堆肥、焼却灰、汚泥などで、医療系廃棄物や有機溶剤などが一緒くたに広範囲に埋めていたそうです。
91年に認可を受けた会社が99年に摘発されたので10年近く不法投棄を繰り返していました。2001年盛岡地裁が二つの法人に対して罰金2,000万円、代表者を罰金1,000万円+懲役刑(執行猶予付き)に処する判決を下しましたが、もう一方の代表者が保釈中に自殺したこともあり、最終的には廃棄物を排出した業者に措置命令が出され、該当する排出事業者は現場からの廃棄物の撤去を行いました、その後、原状回復事業を国が支援する産廃特措法が2003年に成立し、その後全量撤去が完了したようです。が、あと数年はかかる原状回復に要する経費は約480億円が見込まれているそうです。
3愛知県西尾市/養鰻場跡不法投棄事件
養殖ウナギの名産地として有名な旧一色町(愛知県西尾市)にある養殖場跡地にゴミを埋めたとして、産業廃棄物処理法違反(不法投棄)の疑いで、建築解体業社長ら男5人が逮捕されました。逮捕容疑は、所有する旧一色町沿岸部の養鰻(ようまん)場の池に家屋解体で出たがれきなど二十数トンを捨てたというもの。ウナギの養殖池は1~1・5メートルの深さがあるため、産廃業者が穴を掘らずにごみを埋められるメリットがあるそうです。
容疑は二十数トンですが、過去1年間に1800トンを不法投棄していたとして警察が立件しています。こちらはウナギの養殖池でしたが、池や沼などに不法投棄する例は全国にあるんでしょうね。沈んだら分かりませんし。
各自治体の取り組み
解体業者や産廃業者などの大規模な事件を3つ紹介しましたが、個人レベルの不法投棄は枚挙にいとまがありません。皆さんもゴミシールの貼っていないレンジだとかイスなんかが道端に放置されていることを見たことがあると思います。マンションなどに住んでいる方だと、引っ越しした住人が粗大ごみを玄関脇あたりに放置していった、といったケースに遭遇したことが一度はあるのではないでしょうか? そのゴミの処分は結局マンションの管理費から出すことになったりします。
最近では防犯カメラがついたマンションなども増えてきていますし、今後は住民のちょっとした出来心感覚の不法投棄は減っていくと思われます。最後に各自治体の不法投棄に対する取り組みについて紹介します。今はどこの自治体でもかなり厳しい監視をしているようですね。
1環境省/不法投棄等対策関連
環境に関するジャンルの親方だけに、項目が非常に多い! 5月30日(ゴミゼロの日)から1週間、毎年「全国ごみ不法投棄監視ウィーク」を開催しています。ここで平成29年度(最新版)の全国の不法投棄事案についての調査結果を載せておきます。内々に処理した(された)ケースはこの数字の何倍もあるような気がしますが…。
・不法投棄件数:163件前年度131件)[+32件]
・不法投棄量:3.6万トン前年度2.7万トン)[+0.8万トン]
これは新規の数字で、処理が終わっていない事案(残存件数)は2,630件、残存量は1,559.4万トンとなっています。ケタが違いますね。不法投棄はゴミだけを撤去しても、土や水などに有毒物質などが染みこむこともありますし、完全に終了するまでに長い時間がかかります。平成10年代のピーク時に比べて大幅に減少しているようですが、いまだになくなることはありません。
2首都圏など広域自治体/産廃スクラム
産業廃棄物の不適正な処理は、年々広域化、悪質化、巧妙化し、近隣自治体との広域連携が不可欠になりました。平成12年度に、東京都の呼びかけで、関東甲信越・福島・静岡地区の1都10県10政令市21の自治体で構成する「産業廃棄物不適正処理防止広域連絡協議会」(通称:産廃スクラム21)が設立されました。その後、14自治体が加わり、現在、1都、11県、23の政令指定都市及び中核市の35自治体で構成されています。
具体的な活動として、毎年一回、全ての自治体が参加して全体会議を開催しています。その中で各自治体が産業廃棄物の不適正処理等の具体的な解決事例の報告を行うなど、自治体間での情報の共有化に努めているようです。一般社団法人東京路線トラック協会とも提携し、トラックドライバーが、業務中に不法投棄等を発見した場合に、産廃スクラムに加盟する自治体へ情報提供を行うという協定を締結しました。他にも建物解体工事の現場指導、特定地区内での路上調査、路上パトロール(夜間・休日含む)、スカイパトロール、海上パトロールなどを行っています。
3山梨県/富士山クリーンアップ事業
産廃スクラムにも参画している山梨県ですが、世界遺産の富士山を抱く県だけに、富士山の産業廃棄物撤去支援事業を行っています。富士山がご存知の通り、ゴミが非常に多く捨てられており、民間などでもゴミ拾い運動などが行われていますが、県としては市町村、NPO等と連携して、不法投棄により長期間放置されている産業廃棄物の撤去活動を実施しています。
特に廃タイヤが多いようで、少し古い資料ですが、平成23年8月から平成24年7月にかけて計9回の撤去活動により、3,597本の廃タイヤを全て撤去することができました。富士登山も人気だけに、心無い登山客の食べ残しなどのゴミもいまだに多いのではないでしょうか。樹海にはゴミだけではないものも…。
4宮城県/不法投棄防止啓発ラジオCMなど
宮城県では不法投棄防止を呼び掛けるラジオCMを放送しています(令和元年10月まで)。また不法投棄防止対策を徹底するため,産業廃棄物適正処理監視指導員(産廃Gメン)15名を県内の各保健所等に配置し,きめ細やかな監視パトロールを行っています。さらに地上からでは把握が困難な場所に対する不法投棄の監視のため,ヘリコプターで上空から監視を行っています。
宮城県、山形県、福島県、仙台市、郡山市及びいわき市では、「南東北産業廃棄物不法投棄対策担当者会議」という名称で、「産業廃棄物の収集・運搬の実態把握」「違反行為の早期発見・早期対応」「不法投棄防止のための広報啓発」を目的として産業廃棄物運搬車両を対象とした『一斉検問』を実施しています。山地が多く県をまたぐ格好の東北ではこうした広域の活動が必須のようです。東日本大震災におけるゴミの処理はさぞ多変だったんでしょうね。
5大阪府/不法投棄防止キャンペーン
大阪府産業廃棄物不適正処理対策会議では、毎年6月と11月の強化月間を中心に廃棄物の不法投棄防止を訴える街頭啓発活動を行っています。特に目新しい活動ではありませんが、大阪では家電4品目(テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン)の不法投棄件数が全国一位(平成25年)を記録するなど、首都圏よりかなり多いようです。古い資料ではありますが、性格的なものがたぶんにあるのでしょうか。ちなみに北海道もかなり多いです。正直捨てる場所には困らないですしね。
軽い気持ちで一生を棒に振る可能性も
以上自治体の取り組みなどを見てきましたが、毎年のように罰則が強化され、ゴミの処分が面倒になってきています。業者などの大規模な不法投棄ばかりが目につきますが、個人のポイ捨てでもとんでもないことになることがあります。仕事関係のゴミを家庭ゴミの集積所に出す、集積所以外の場所に捨てる、収集日以外の日に出すという誰でも一度は経験がありそうなちょっとしたことでもアウトです。当然引っ越しの際に粗大ゴミをマンションの共有スペースに放置して逃げた、なんてケースは自治会などから訴えられたら絶対に逃げられません。
都会では監視カメラも増えていますし、誰もいないカメラもない公園あたりに捨てたとしても、見られて通報されたらアウト。捨てたゴミの中に個人情報などが入っていたらそこからバレるケースもあるようです。魔が差した、面倒でつい、粗大ゴミセンターが埋まっていたのでしょうがなく、など理由はどうあれ、逮捕されてしまうと社会人や学生は人生を棒に振ってしまうことになります。
とにかく今は分別も処理方法も自治体、品目によって細かく分かれていますので、面倒ではありますが、しっかり調べて把握して、粗大ゴミに出せるならものなら出す、出せないものや数が多い場合などは業者を調べてお願いする、など早めに対策をしておきましょう。引っ越しなど時期が決まっている場合は、その近辺の粗大ゴミの収集が埋まっていたらどうしようもありません。最低でも1か月前から準備をしておきましょう。