死後に備えて生前整理や終活ですべき9つのこと。エンディングノート記入から遺骨ダイヤモンドなど最新のお葬式、散骨事情まで
今回の記事は、8月に東京ビッグサイトで開催された「エンディング産業展」での取材などもふまえ、「遺品整理」「終活」「生前整理」「最新のお葬式事情」などについて紹介します。今回の記事は、8月に東京ビッグサイトで開催された「エンディング産業展」での取材などもふまえ、「遺品整理」「終活」「生前整理」「最新のお葬式事情」などについて紹介します。
目次
すっかり定着した遺品整理。改めて遺品整理とは?
「終活」や「遺品整理」といった言葉がすっかり定着した昨今。基本的には死を前提としていることもありマイナスイメージのワードですが、高齢化社会を迎えた日本ではスムーズに受け入れられている感じです。ビジネスチャンスとばかりに様々なジャンルの会社などもこの業界に参入し、大々的なイベントまで開催されています。
改めて遺品整理の定義について。“遺品”というだけに、故人の遺族が家や部屋に残された様々なものを整理するというものです。現金や不動産などは法律に則って手続きするとして、故人が使っていた生活用品などが主に該当します。配偶者や家族が同居していればそれほど大変ではないでしょうが、一人暮らしで部屋の退去日が決まっていたり、離れて暮らしていた場合などは遺族の負担はかなり増すことになります。
家族(遺族)を悩ませないための終活、生前整理とは?
こうした残された遺族の負担を少しでも軽減するために、まだ元気なうちに死後のもろもろについて準備しておくことがいわゆる“終活”ということになります。遺産をめぐってドロドロの争いになったり、相続税を支払うために財産を処分した、といった話は色んなところで耳にします。地方では誰も済まなくなった家が放置されて空き家が増えているというニュースもしょっちゅう聞きますよね。
今回は主に現金や土地、株券などの不動産など財産についての「生前整理」をメインに紹介しいていこうと思います。ある程度まとめたら、お盆やお正月など家族や親族が集まったときに少しでも話し合っておくとよいでしょう。
まずご自身でやっておくべき9つのこと
人生の終盤を見据え、ご自身の今後、そして残される遺族に対して、やるべきこと、やってほしいことなど9項目を紹介します。まずは手書きでもデジタルデータでも残しておくことが必要です。遺言書をすでに書いている、といった方もいらっしゃると思いますが、遺言書は財産や不動産の管理などを誰に託すか、といった法律上の意思表示を書面に記したもの。そこまで大げさではない、たとえば残されたペットの管理とか、趣味の品の処分といったものなども含む日常の細々としたものもすべてひっくるめた「エンディングノート」を書くことを強くおススメします。やるべきことの一つ目は「エンディングノート」の記入です。
1エンディングノートを書こう
エンディングノートとはその名の通り人生の終わりを記したノートのことです。終活はライフステージにおいて、“これから何をすべきか”や“最後はどうあるべきか”などを考えて行動すること。それらの計画をご自身の手で具体的に記したのがエンディングノートといえます。
エンディングノートには決まった形式はありません。最近はスマホアプリなども出ていますが、ノートに手書きでも、パソコンのワードやExcelなどでもかまいません。ただ、スマホやパソコンは死後に遺族がパスワードが分からなくて開けないケースなどもありますし、文具店や書店など市販のノートが良いのではと思います。コクヨの『もしもの時に役立つノート』などが人気のようです。
2葬儀やお墓の希望、貴重品の情報や個人情報などは必須
二つ目は個人情報の記入です。エンディングノートの性格上、最初に終末期医療についての対応や葬儀やお墓の希望、友人や知人などの連絡先、貯蓄・保険・年金・その他の貴重品の情報や個人情報(遺族の行政などへの手続きがスムーズになります)など、突然死亡したときでも遺族が困らないための情報の記入は必須といっていいでしょう。ご自身しか知らない情報は遺族にとっては必要不可欠なもの。特に離れて暮らしている場合は近隣の様子も分かりませんし、ご近所さん情報(米屋の〇〇さんは町会長で冠婚葬祭に詳しいとか)もできるだけ記入した方がいいでしょう。
3不動産など資産、あれば借金などを再確認
3つ目は資産や借金などの状況の記入。エンディングノートを書く際に一緒にチェックしておきたいですね。不動産であれば契約書や権利書などの書類や実印などは一か所にまとめて保管しておきます。土地・建物会社、・法人の登記事項証明書や会社・法人の印鑑証明書なども事前に取得しておくことをおススメします。今はオンラインによる交付請求ができますので、ご自宅から簡単に請求し、郵送で受け取ることができます。
株券も同様に確認して、必要な書類はまとめて保管しておきましょう。今や取り引きなどはネットが中心になっていますし、ネット証券などで紙の書類などがないという方はパスワードなどを記入しておきましょう。
4現金・預貯金は定期的に更新しましょう
4つ目は現金などの金額の定期的な更新です。現金や預貯金などは通帳と印鑑をセットにして保管し、半年ごととか定期的に金額を更新しましょう。泥棒に入られた場合のリスクはありますが、分かりにくい場所に隠したり、分散して保管するとご自身の記憶が薄れた場合や突然の不幸などの場合、遺族が大変難儀します。そういう意味でもエンディングノートと合わせて定期的に更新するのがいいでしょう。
5相続税などについて可能なら専門家にも相談
税金などについて税理士などに相談することが5つ目になります。ある程度資産がある方の場合、遺産の財産分与などは土地や建物など不動産がからむとかなり面倒ですから、相続税と合わせて相続人(子供など)を交えた話し合いを事前にしておきたいところです。相続人が増えればそれだけもめごとの原因になりますので。
相続税対策が必要な人は過去のケースでも10%に満たないそうですが、90%以上の人の中にはうまく相続税対策をすることで、課税を逃れたという方もいるようです。相続税の基礎控除額は【3000万円+600万円×法定相続人の数】で計算することができます。相続人が配偶者含めて3人いれば4,8000万円までは非課税となります。現金はそこまで持っていなくても、広い土地を所有している方などはけっこう引っ掛かりそうな金額ですね。相続税が発生するか微妙な資産額であっても、相続時に遺族が困らないように、一度は税理士さんに話を聞いてみるといいと思います。できれば相続人も交えた場だとベストです。亡くなられた後も相談したりしやすいですからね。
6生前贈与をうまく活用しよう
6つ目は生前贈与について。相続税率(法定相続分に応ずる取得金額)は1,000万円以下では10%ですが、3,000万円以下で15%(控除額50万円)、5,000万円以下で20%(控除額200万円)と増えていきます。子供やお孫さんに確実に資産(現金)を残したい方は生前贈与を賢く利用しましょう。
贈与税の基礎控除を利用することで毎年110万円ずつ非課税で贈与することができます。お孫さんがいる方は教育資金贈与の非課税制度を利用することで1500万円を非課税で一括贈与することもできます。生命保険や不動産(アパート・マンション経営)などでも相続税対策ができます。他にもいろいろありますが、細かいことは税理士さんにご相談ください。ドラマとかですと弁護士が出てきて遺族がもめる、といった場面がありますが、お金に関することは税理士さんが一番詳しいです。遺族にとっては、葬儀の費用や遺品整理など何かと物入りな時期に頼りになる存在です。
※2019年8月時点の計算です。
7デジタルデータもしっかり整理
7つ目はデジタルデータの整理、対策です。パソコンを触ったこともないようなお年寄りは多いと思いますが、最近はスマホを持っている人も増えていますし、デジタルデータが全くないという故人はかなり少ないのでは。写真データはもちろん、友人知人の連絡先はすべてスマホの中という方がなくなった場合、パスワードなどが分からないと遺族は葬儀にあたり誰に連絡していいのか、かなり困ることになります。そうした意味でも、デジタルデータの管理、対策は重要です。
またSNSや有料サイトなどに登録していた場合などは退会手続きを取らなければいけません。アドレスやパスワード、退会手続きなどの操作方法をノートに記しておく必要があります。趣味のサイトなどであれば、亡くなった後に遺族によってそのサイトに書き込み(例えば葬儀場の情報を載せてほしいとか)してほしいケースもありえます。残してほしい写真データや破棄してほしいデータ、アプリ、他人には見られたくないデータなども含め、デジタルデータ対策は必ず忘れないようにしましょう。
8遺品整理してくれる業者のリストアップ
8つ目は業者の選定です。ここまで進んだら、遺品整理の業者もリストアップしておきたいところ。現在では民間資格ではありますが、遺品整理士という資格があり、全国で25,000人くらいが遺品整理業に携わっているそうです。法整備が追い付かず、不用品を不法投棄したり、高額請求する悪徳業者などもいるため、安心できる業者を探しておくのも生前整理のひとつ。“遺品整理”で検索すると広告も含めて非常に多くの業者がひしめいていることが分かります。“業界最安”などのうたい文句に惑わされることなく、信頼できる業者をいくつか選んでおきましょう。
お葬式、散骨の様式も決めておきましょう
最後の9つ目ははやっぱりお葬式の手配になります。特に突然の訃報だった場合、遺族は何よりも優先して葬儀をどうするかを考えるものです。葬儀業者を事前に決めて残しておけば、遺族の精神的な負担は相当軽くなります。
お葬式といえば、日本では一般的に葬儀場などでお通夜、告別式などを経て、身内による火葬というのが一般的です。大きなお宅などでは自宅で行うケースもありますが、プロにまかせた方が楽ですしね。葬儀場では仏教式が多いですが、神道やキリスト教などの方式で葬儀をしたい方もいることでしょう。また葬儀はしなくていい。骨は××に埋めて(散骨して)くれ、といった方もいるかもしれません。
最近はお葬式や散骨などで今までなかったような様々なタイプが出てきています。一般的ではない方式でお葬式をしてほしい、散骨をしてほしいという方に以下の四つの方法を紹介します。他にもいくつかありますが、最近流行っている形式ですので、参考にしてみてください。
1一日葬
一般的にお葬式は通夜と告別式で2日間かかりますが、1日で行う方法もあります。それが通夜を行わない一日葬です。身内だけの少人数で通夜を省いて告別式から火葬まで1日ですべて行います。遺族の負担が軽減されるので用者が増えているようです。ただし1日ですべて終わらせるため、前日の準備が大変らしい。20名程度で30万円前後でできる業者が多いですが、オプションを付けていくと金額がどんどん上がりますので注意が必要です。
※2019年8月時点確認した金額です。
2海洋散骨
自然葬(お墓ではなく海や山などに遺体や遺灰を還すこと)のひとつとして樹木葬などと並んで最近人気上昇中なのが海洋散骨。一般社団法人日本海洋散骨協会が中心となり、ガイドラインを定め、散骨のルールとマナーを啓蒙しています。が、法整備が進んでおらず、未だにグレーゾーンといった感じです。故人が沖縄の海が好きだったとか、お墓はいらないから海に散骨してくれ、といった意向を持っていた場合などにはそうしてあげるのがよいでしょう。散骨後に証明書、デジタルフレームなどが送られることが多いようです。現地に行かない代行の場合は2万円台から5万円前後でできる業者がほとんどです。
※2019年8月時点確認した金額です。
3宇宙葬
宇宙葬とは遺骨などをカプセルなどに入れてロケットなどで宇宙に打ち上げる散骨の一種です。日本では2014年に初めて成功しています。「エンディング産業展」でも銀河ステージという会社が出店し、スペースメモリアル(同社の登録商標)という名称で動画などを公開し、話題を集めていました。一番安いプランで45万円、月旅行プランや宇宙探検プランで250万円と高額ですが、女優の島田陽子さんが生前予約を申し込むなど、今後さらに注目を浴びそうです。
※2019年8月時点確認した金額です。
4遺骨ダイヤモンド
おそらく初めて聞いた方が多いと思いますが、遺骨をダイヤモンドに加工するという驚きのシステムです。火葬後の遺骨に含まれる炭素を取り出し、人工的に高温高圧にかけることで製造された合成ダイヤモンドで、硬度、輝きなどは天然ダイヤモンドとまったく同じだそう。ダイヤモンド葬、メモリアルダイヤモンドなどとも呼ばれ、全く新しい遺骨供養として依頼が急増。お墓はいらない、墓じまい(現在のお墓を撤去すること。遺骨を他の墓地に移転するか永代供養墓地に改葬するケースが多い)したい方に人気のようです。0.2カラット50万弱からでき、ジュエリーに加工すると金額がアップします。ペットやお子さん、昔の遺骨などでもでき、トータル半年程度の期間で完成するそうです。
死後に備えて家族でしっかりと共有
以上生前整理、最新のお墓、散骨事情について紹介しました。ご自身がどのようなエンディングを迎えたいのか、遺族には自身の死後どのように行動してほしいのか、どういう葬儀をしてほしいのか、それぞれちゃんと話し合って、共有しておくことが大切です。お葬式や遺品整理にはお金もかかりますし、金額的な面はもちろん、その後の処理、処分まで含めてしっかり話し合いをしておきましょう。
断捨離ではありませんが、少しずつものを減らしていくことも必要です。「終活」「生前整理」をしっかり進めることで新たな生きがいが見つかるかもしれません。