玉切れの蛍光灯、どうやって処分すればいいの?
照明のLED化が進んでいますが、家庭やオフィスのメインの照明は未だに蛍光灯を使っているというところも多いのではないでしょうか?
一般的な蛍光灯の寿命は約10〜15年。蛍光灯のランプ部分である蛍光管の寿命は6,000時間〜12,000時間といわれており、毎日8時間程度使用していると、おおむね2年〜 4年で玉切れする計算になります。
玉切れした蛍光灯は捨てることになるのですが、2017(平成29)年10月より有害物質である「水銀」を含んだ蛍光灯の廃棄方法がより厳格になりました。
そこで今回は、玉切れになった蛍光灯の適切な処分方法についてご紹介します。
目次
蛍光灯の基礎知識
まず簡単に蛍光灯のしくみについて知っておきましょう。
蛍光灯がドイツ人のエトムント・ゲルマーによって発明されたのが、1926(昭和元)年のこと。その後、実用化が研究され、1937(昭和12)年にアメリカで発売されました。日本では1940年代から売られるようになり、1970年代に普及しました。
蛍光灯のしくみは、次の通りです。
蛍光灯のランプ部分である蛍光管の両端には「エミッタ」という部品があり、蛍光管の内部は不活性ガスと水銀ガスが封入され、蛍光管のガラス部分の内側には蛍光塗料が塗られています。
蛍光灯に電気を流すと、エミッタから電子が放出されます。この電子と水銀ガスがぶつかると紫外線を出します。紫外線はそのままでは目に見えませんが、蛍光塗料が塗られた蛍光管の内側にぶつかることで、目に見える光になるというものです。
蛍光灯は、蛍光管に塗る蛍光塗料の種類によって光の色を替えたり、直管型・電球型・円環型と形状も替えたりできることから、家庭、オフィス、工場など、さまざまなところで使われるようになりました。
蛍光灯が簡単に捨てられない理由
蛍光灯は長く使用していると、エミッタが劣化したり、蛍光塗料が消耗して、次第に照度が低くなり、やがて玉切れしてしまう消耗品です。
使えなくなった蛍光灯は捨てることになるのですが、簡単には捨てることはできません。その理由について紹介します。
1蛍光灯には有害な水銀が含まれています
前項の「蛍光灯の基礎知識」でも述べましたが、蛍光灯の中には水銀ガスが充填されています。つまり、水銀が含まれています。
水銀は、1950年代に水俣病という大きな公害病の原因となった有害物質です。
蛍光灯を無造作に廃棄してしまうと、内部の水銀が放出されると、重大な健康リスクや環境リスクを引き起こしかねません。そのため、水銀を含むものについては世界的に厳格な廃棄方法が定められています。
加えて、2017(平成29)年10月に施行された「廃棄物処理法の改正」では、水銀廃棄物の取り扱いがより厳しくなり、蛍光灯を廃棄する際は原則として水銀を適切に運搬・処理できる事業者に回収してもらわなくてはならなくなりました。
2蛍光灯には貴重なレアアースも含まれています
蛍光灯には、水銀のほか、蛍光塗料にイットリウム、ランタン、セリウム、テルビウム、ユーロピウムといった希少なレアアースが使われています。
レアアースは電子機器や自動車モーターなどハイテク製品を製造する上で欠かせない元素です。しかし、ほほすべてを輸入に依存しているため、供給量や価格が不安定という弱点があります。
そこで、不用になった蛍光灯をきちんとリサイクルし、レアアースを取り出すことができれば、希少な資源であるレアアースの安定確保に貢献できるというわけです。
ちなみに福岡県や九州大学などからなる共同プロジェクトが2011年に発表した情報によると、九州で1年間に排出される使用済み蛍光灯をすべて回収してリサイクルできれば、約57トンものレアアース(約25億円相当)を確保できるという試算が出ています。
3家庭とオフィスでは処分方法が異なります
不用になった蛍光灯を、単純なごみとして捨てることはできないということはおわかりいただけたと思います。
また、蛍光灯を捨てるとしても、せいぜい1〜2本程度の家庭と、大量に捨てる可能性のあるオフィスや工場では廃棄方法が異なります。
それぞれの廃棄方法については、後ほど詳しく説明します。
4割れた蛍光灯を処分するには
蛍光灯の大部分はガラスでできているため、ちょっとした衝撃で割れてしまうことがあります。
割れた蛍光灯はガラス片が危険なだけでなく、中に充填されていた水銀ガスが空気中に拡散されてしまいます。
水銀ガスを吸ってしまい、体内に水銀が蓄積されると、いずれ水銀中毒になってしまう危険性があるので注意が必要です。
もし目の前で蛍光灯が割れてしまったら、できるだけ息を止めて、素早く換気するようにしましょう。
また、割れた蛍光灯を片づけるときは、ガラス片でケガをしないように、ラバー製の手袋などを着用し、誤って踏まないように足元にも注意しましょう。
割れてしまった蛍光灯はもはや水銀を含まないため、通常のガラス製品と同様に「不燃ごみ」として処理されるケースがほとんどです。
ただし、自治体によっては危険物として回収される場合があるので、お住まいの自治体に問い合わせてみることをおすすめします。
なお、不燃ごみや危険物として回収場所に出すときは、新聞紙などにくるんガラス片が飛び散らないようにし、「危険物」「キケン」「ガラス割れあり」などと明記するようにしましょう。
次項からは蛍光灯の具体的な廃棄方法についてご説明します。
蛍光灯の処分方法・家庭篇
まずは家庭から出た蛍光灯の廃棄方法についてご紹介します。
1自治体の回収
廃棄方法として真っ先に思いつくのが、自治体による回収ではないでしょうか?
実は蛍光灯の回収については、自治体によって対応が異なります。
そのため、お住まいの市区町村のホームページを参照されるか、電話等で問い合わせて、自治体が定める適正な廃棄方法に従ってください。
参考までに実際の例も見てみましょう。
東京都世田谷区の場合は、
(1)「不燃ごみ」として回収に出す。
(2)世田谷区指定の「電器店・家電量販店・ホームセンター」へ持っていく。
この2通りを方法を採っています。
(1)の場合は、蛍光灯が割れないように、購入時のケースに入れて出すことをお願いしています。
(2)は、世田谷区内5ヵ所の家電・電器店・ホームセンターで、蛍光灯の買い替えに伴う無料回収を行っています。
つまり、蛍光灯を同店で1本購入すれば1本、2本購入すれば2本、無料回収してくれることになります。
なお、東京都中野区の場合は、区内の公共施設18ヵ所に「使用済み蛍光灯回収ボックス」(下記画像参照)を設置し、そこに入れてもらうことをお願いしています。
ただし、近くに回収ボックスがない場合や、高齢等により回収ボックスまで行けない場合は「陶器・ガラス・金属ごみ(不燃ごみ)」に出すという方法を採っています。
2電器店・家電量販店の回収
前項の世田谷区の回収では、区内の「コジマ×ビックカメラ」などの電器店・家電量販店・ホームセンターに持っていって回収してもらうという方法が採られていますが、その他の地域でも地元の電器店・家電量販店・ホームセンターに協力してもらい、回収を行っているケースがあります。
お住まいの自治体のホームページ等に協力店舗が記載されていますので、調べてみることをおすすめします。
また、店舗によっては割れている蛍光灯などは回収しないケースもあるので、回収条件も合わせて確認してみましょう。
3不用品回収業者に依頼
蛍光灯を捨てたいのだけど、不燃ごみの日まで待てない、あるいは、蛍光灯以外にも処分したいものがたくさんあるなどといった場合には、不用品回収業者に依頼するという方法があります。
不用品回収業者のメリットはとにかく迅速なこと。
タイミングが良ければ、申し込んだ当日に自宅まで回収に来てくれることもあり、たとえば引っ越しを目前に控えているなど、急いでいる人におすすめです。
ただし、2017(平成29)年10月の法改正により、蛍光灯を回収できる不用品回収業者は限定されるようになったため、利用する場合は「一般廃棄物処理業」の許可を持った適正な業者を選ぶことはもちろん、蛍光灯(水銀廃棄物)を処理できる業者であるかを確認してから依頼するようにしましょう。
蛍光灯の処分方法・法人篇
続いてオフィスや工場などから出る蛍光灯の廃棄方法についてです。
2017(平成29)年10月の法改正によって、蛍光灯は産業廃棄物として処分しなければならなくなりました。
そのため、自治体回収には出せず、蛍光灯(水銀廃棄物)を処理できる業者に回収を依頼する必要があります。
依頼先としては、主に以下の2つとなります。
1蛍光灯のリサイクル業者に依頼
ひとつは、蛍光灯のリサイクル業者に依頼するという方法があります。
これらの多くは地域限定で回収し、自社でリサイクルを行うという業者です。
蛍光灯のリサイクルを専門で行っているので、当然ながら水銀廃棄物の適正処理基準をクリアしており、安心して任せられます。
たとえば、下記画像のフジ・トレーディング株式会社は、関東を中心に一都8県を対応エリアとしており、オフィスや工場で排出された蛍光灯を回収・リサイクルしています。
回収方法(料金プラン)は3種類で、大量の蛍光灯を一括で回収するプラン、蛍光灯4本から回収する少量プラン、定期的に巡回して回収するプランが用意されています。
このように、インターネット等で検索すれば、オフィスや工場が位置するエリアをカバーする蛍光灯のリサイクル業者を見つけられると思います。
2不用品回収業者に依頼
もうひとつの方法が、家庭から出た蛍光灯の処分方法でもご紹介した、不用品回収業者に依頼するという方法です。
法人が不用品回収業者に依頼するメリットは、対応がスピーディなことと、蛍光灯以外の廃棄物も合わせて処分してくれることにあります。
ただし、不用品回収業者を名乗る業者のなかには、不当に高い回収費用を請求したり、回収した不用品を不法投棄するような悪徳業者も潜んでいます。
不用品回収業者を利用する場合は、「一般廃棄物処理業」の許可を持ち、蛍光灯(水銀廃棄物)を処理できる業者であるかを確認してから依頼するよう注意しましょう。
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不用になった蛍光灯を処分するには
人体にも環境にも有害な水銀と、貴重な資源であるレアアースを含んだ蛍光灯
適正な処分を行い、リサイクルすることが求められています。
家庭から排出した蛍光灯であれば、お住まいの自治体の決まりに従って処分し、法人から排出した蛍光灯であれば、蛍光灯のリサイクル業者に依頼することが最も確実な方法と思われます。
しかし、家庭なら自治体で定められた回収ボックスが近くにない、不燃ごみの日まで待てないなど、法人なら蛍光灯以外にも処分したいものがたくさんあるなどの事情がある場合には、不用品回収業者に依頼するという方法があります。
蛍光灯のような水銀廃棄物を処理できる業者であれば、まず間違いはないので、安心して依頼してみてはいかがでしょうか。
もし回収金額が気になる場合は、事前に見積りだけでも依頼されてみることをおすすめします。
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