ゴミを持ち去ると犯罪!? ゴミの所有権と問われる罪とは?!

もしも、外を歩いていてまだ使えそうな家具などが粗大ゴミとして置いてあったら…皆さんはどうしますか?
「要らないから捨てているのだし、貰ってしまっても問題ないのでしょう?」と思うでしょうか。それともゴミとはいえ、まだ誰かの持ち物であることに変わりないと思うでしょうか? この記事では、ゴミを持ち去ったときにどうなるのかを詳しく説明していきます。

目次
  1. 1. 捨てられたものを拾って自分のものにするのはどんな問題がある?
  2. 1. ゴミの持ち去りで問われる可能性のある罪はどんなものがある?
  3. 1.1. 1窃盗罪(せっとうざい)
  4. 1.1. 2軽犯罪法違反(けいはんざいほういはん)
  5. 1.1. 3威力業務妨害罪(いりょくぎょうむぼうがいざい)
  6. 1.1. 4占有離脱物横領罪(せんゆうりだつぶつおうりょうざい)
  7. 1. ゴミの持ち去りに関する事例
  8. 1.1. 1建物内のゴミ箱に捨てられている物を持ち帰った場合
  9. 1.1. 2ゴミ集積所にあった回収待ちの自転車を修理して乗っていた場合
  10. 1. 今後も罰則が厳しくなるかもしれない

捨てられたものを拾って自分のものにするのはどんな問題がある?

物を捨てるというのは、不要なので所有権を手放しているという見方ができるため、民法上の解釈では無主物であるという捉え方ができます。無主物であれば法律上は誰の物でもないため、拾って自分のものにすることは問題がありません。しかし、ゴミ(廃棄物)として収集・運搬してもらうことを前提としてゴミ集積所などに置いているものに関しては少々事情が異なります。

廃棄物に関する法律の中では、国民が出したごみを適切に処分することを自治体は義務付けられています。そのため、各自治体でルールや回収などの計画を立てて税金で運営されるようになっています。各自治体の決めたルールによって出されたゴミは、ゴミを捨てる人と自治体の間でゴミを収集運搬して処分する契約をしているという捉え方もできます。

ゴミを勝手に第三者が持って行ってしまうことで、自治体側は法律で定められた義務を果たせなくなります。ゴミを捨てた人も、自治体のゴミ収集運搬がキチンと機能しなくなるのは払った税金が無駄になることに繋がるため問題があるといえます。

資源ゴミではないゴミでも勝手に持ち去ることを禁止し、それに違反した者に対して罰金を科すルールを定めている所もあり、粗大ゴミもシールを貼られた物はその時点で自治体が一時的に保管しているものと見なされているため、その粗大ゴミを持ち去ることも窃盗に当たります。

ゴミの持ち去りで問われる可能性のある罪はどんなものがある?

1窃盗罪(せっとうざい)

窃盗罪というのは、「これは私のものです」という権利を保護しているのではなく、「実際に保管している状況そのもの」を保護するためのものです。そのため、捨てられたゴミを誰かが実際に保管しているのであれば窃盗罪になります。
ゴミを捨てた本人との関係では、「ゴミを捨てた時点でゴミを保管している状態をやめている」といえるので、窃盗罪は成立しないと考えられます。しかし、ゴミ集積所や「持ち去り禁止」などと書かれたゴミ捨て場に集められた資源ゴミは、一般的に捨てた時点で都道府県や市町村の物になり、マンションなどその敷地内に集められたゴミは、「マンション側が保管している状態」になるため、そのゴミを勝手に持ち去ると窃盗罪になる可能性があります。

2軽犯罪法違反(けいはんざいほういはん)

マンションなどの敷地内にあるゴミ集積所で「関係者以外立ち入り禁止」という記載がある場合、勝手に入ってゴミを持ち去ることは、「軽犯罪法第1条第1項第32号」入ることを禁じた場所に正当な理由なく入った罪として問われる可能性があります。

3威力業務妨害罪(いりょくぎょうむぼうがいざい)

他人の意思を圧迫し、業務を妨げる行為の事です。

本来ならデモや労働組合の活動などに適用されることが多く、ゴミにあまり関係ないように思えますが、実はゴミの持ち去りにもこの行為が成立する場合があります。なぜなら、自治体は住民が出したゴミを適正に収集して運搬する責務があり、この住民たちが出したごみを持ち去ることは「その責務を妨害した」と見なされる場合があるからです。

4占有離脱物横領罪(せんゆうりだつぶつおうりょうざい)

横領罪の一種でであり、正確には「遺失物等横領罪」(いしつぶつとうおうりょうざい)と呼ばれる罪です。俗に言う「ネコババ」「置き引き」とも呼ばれ、こちらの方がイメージしやすいと思います。

「遺失物」というのは、分かりやすく言うと「落とし物」のこと。「占有」は「自分の支配下に置いている物」のことを意味します。例としては、誤配達された郵便物、誤って多く渡されたお釣りなどが当てはまります。
一見この罪もゴミに関係ないように思えますが、例えばもし捨ててあるものが「盗まれた自転車」であった場合、それは盗まれた本人が意図せずに捨てられてしまったものなので、もしそれを持ち去ってしまえばこの罪に問われる可能性があります。

ゴミの持ち去りに関する事例

1建物内のゴミ箱に捨てられている物を持ち帰った場合

捨てた物は捨てた人が所有権を放棄していると言えますが、建物内あるいはその敷地内にある場合、その場所の管理者(管理人ではなく、本来の寮の所有者や会社など)の占有下にあります。つまり、その捨てられた物をどうするかはその場所の管理者が決めるべきことで、勝手に持ち去れば管理者の占有物を奪取して自分の占有物にしていることになります。このような場合は窃盗と言えなくもありません。

ただし、もし寮の管理人がそのこと知っていて放置してる場合、占有者が「持ち帰って良い」と言ってるのと同じですから、特に問題にはならないでしょう。
それでも例外的に、占有離脱物横領罪が成立する可能性はあります。

他にも資源ごみについては、各自治体が持ち去りを禁止しており条例で罰則を設けていますので、この場合には犯罪が成立することになります。
また、条例で資源ごみ持ち去りが禁止されている場合、マンション敷地内という私有地であっても行政の所有権侵害ということで窃盗罪が成立するかどうかですが、これは理屈上、行政権の所有権侵害なり管理会社の占有侵害も考えられますが、被害額が少額のために不起訴処分となる可能性が強いという問題点もあります。
ただ、集積所に排出された資源ごみの所有権が行政にあることを前提に、持ち去り行為が窃盗罪の構成要件を充足するというタイプの条例を制定している自治体もあります。

2ゴミ集積所にあった回収待ちの自転車を修理して乗っていた場合

本人が「拾ったものだ」と主張しても、実は盗まれたものである可能性もあります。警察ではその自転車につき被害届が出されていないかを調べ、窃盗でないと判断された場合は占有離脱物横領罪で調書が取られるでしょう。
また、「被害届が出ている」という事実だけでその人が窃盗罪になるわけではありません。
被害にあった「日時」「場所」「状況」などから拾ったと主張するものが、実は盗んだ必然性が高いと判断された場合に窃盗の疑いを受けるのです。

今後も罰則が厳しくなるかもしれない

ゴミを持ち去ることは確かに罪です。しかし、この行為を罪という自覚なく行う人も少なくありません。そんな不届きな人達の対策のため、各地では様々なゴミの持ち去りの対策が組まれています。福岡市では収集した不燃ごみからアルミ缶と鉄を分別し、売却しています。その売却益は年間1.5億円~3億円にのぼり、そこで条例化に向けてさまざまな角度から検討を行っています。

ほかの自治体でもごみの持去りに関しては今後厳しくなると考えられるため、むやみにゴミを持ち帰らないように注意しましょう。