相続や遺品整理で相続人を困らせないためにやっておくべき、生前整理方法
生前整理をご存知でしょうか? 通常亡くなられた方の遺族が遺品を整理することを遺品整理といいますが、生前整理は故人が亡くなる前に自分自身で行うものです。
目次
生前整理、老前整理、遺品整理…○○整理って沢山あるけど違いは何?
遺品整理や生前整理など、似たような言葉がいくつかありますが、それぞれ違いは何なのでしょうか?
老前整理 | 生前整理 | 遺品整理 | |
---|---|---|---|
いつ | 老いて体の自由が利かなくなる前に | 生きている間に | 亡くなった後に |
誰が | 自分 | 自分 | 遺族 |
なぜ | 将来の自分の負担を減らすため | 残された家族の負担を減らすため | 社会への責任を全うするため |
何を | 居住空間を中心とした身の回りの物 | 遺品となりうる私物や財産 | 遺品 |
表のように、遺品整理は故人が亡くなった後に遺族が行うものなのに対して、生前整理と老前整理は故人が亡くなる前に自身で行うものです。生前整理と老前整理はどちらも似たようなもののように見えますが、老前整理が自分のために行うのに対して生前整理は残された家族のために行うものです。
そもそも生前整理は必要なのか?
故人の死後、相続や遺品整理で相続人が困ることがあります。なぜなら、相続はお金が絡むことなので、家族親族間での争いに発展することがしばしばあること。また、遺族とは離れて暮らしていた場合、どこに何があるかを遺族は把握していないことがほとんどです。相続したはずの不動産の権利書が見当たらない……なんてことになったらパニックになること間違いなしです。(不動産の権利書は相続時に相続人の名前で再登記可能なので問題ありませんが)
さらに、遺言書がないことで残された遺産に何が含まれているのかが分からず、遺産分割を行うために家中を家探しするはめになるかもしれません。
他にも何の準備もないままに逝去された場合、遺族は故人の生前何十年分の私物をどう処分するかで頭を悩ませることでしょう。
遺品の整理で相続人を困らせないためにやっておくべきこと
1生前の整理はいつから始めるか?
生前整理はいつから始めなければいけないということは特にありません。いつ死ぬか? なんていうことは自分自身のことでも分かりませんし、そもそも死期を悟った時には生前整理をできる状態にないでしょう。あまり早すぎても実感はありませんし、あまり遅くても実行する気力・体力が無いかもしれません。なので、ある程度気力と体力が残っている頃、遅くとも50代前半くらいまでには始めて、定年退職くらいまでにはある程度終えている状態が望ましいのではないでしょうか。気力・体力の衰え以外にも、歳を取ると判断力が低下していきます。そうなると、生前整理が最後まで終わらない可能性が出てきてしまいますので、注意が必要です。
2何から手を付けるか?
まず手を付けるべきは、物を減らすところからです。何もせずに老後を迎えてしまうと、数十年分の私物がたまっている状態です。それらは自分自身にとっては特にどうでもよいものだったとしても、遺族からしてみると故人の遺品ですので重要かそうでないかの判断は難しい場合があります。
そのため、物が大量にあるという時点で難易度も作業量も上がってしまいます。
もし、生前整理で物を極力減らしていて、処分方法を知らせていたとしたら遺族は遺品の処分方法で悩む必要が無くなります。
私物の整理方法については、こちらの部屋が片づけられない人が、片づけ上手になるために必要な3つのポイントを参考にしてください。
3デジタルデータをどうするか?
一番扱いに困るのがデジタルデータです。特に近年はデジタル化が著しく進んでいて、何でもかんでもデータ化されてしまっています。故人の葬儀を執り行うにあたり、故人の知人へ連絡を取ろうとしても連絡先が全てスマホに入っていたら連絡がいきわたらないかもしれません。
さらに、写真などのデータを遺す際にどのようにデータを保管しておくか、誰か詳しい人が遺族にいればよいですが、いなければ手順なども含めて用意する必要があります。データの保管方法も、SDカードに入れっぱなしにしておくとデータそのものが消えてしまう場合がありますし、注意が必要です。
また、データの中には誰にも見られたくない、秘密のデータもあるのではないでしょうか。何も後ろめたいことをしていなくても、誰でも秘密にしておきたいものはあるはずです。パソコンやスマホなどの死後の取り扱いを指示しておかないと、見られたくないものまで掘り起こされてしまう可能性があります。そうならないように、死後に遺族が起動すると見られたくない情報を削除してくれるツールや、伝えたい情報だけを公開するためのアプリなどがあります。(パソコン用のソフトは数年前に更新が止まっており、最新のWindows環境ではキチンと動かない可能性があります。)
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僕が死んだら… PC用フリーソフト アイコンをクリックしたときに、予め作成していた遺書のデータがひょうじされます。さらに、事前に設定していたファイル類を削除することができます。 ダウンロード |
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死後の世界 PC用フリーソフト 「僕が死んだら…」と似たようなソフトですが、こちらは何日も起動しないことで発動する時限式になっています。 ダウンロード |
4相続人に遺せる財産をリスト化しておく
予め遺産として残せるものをリスト化しておくと、遺品整理中に存在を忘れて処分してしまうなどのウッカリミスをなくすことができます。また、リストアップついでに一か所にまとめておくなどしてあるとよいでしょう。
相続で相続人を困らせないためにやっておくべきこと
1相続税の問題
遺産が多い場合は相続税が発生する可能性があります。特に厄介なのは不動産ばかりで現金がほぼ0(または借金がある)に対して不動産の価値がものすごく高い場合。不動産を相続した場合は評価額が相続額となるため、この場合現金化できていないので自腹で相続税を支払わなければいけない可能性がでてきます。相続税の納付期限は相続について知った日から10か月以内となっており、不動産をそれまでに売却するのも大変です。そのため、なるべく現金化しておくなどの対策をしておくとよいでしょう。
また、相続税対策として、生前贈与ということも可能です。亡くなる3年以上前までに行われた贈与が生前贈与として有効で、それ以降の贈与は相続税の課税対象となります。年間110万円以下を財産から贈与していくことで、贈与税がかからず相続税も減らすことができます。
ただし、逆に損をする可能性もありますので、必ず税理士に相談の上実行するようにしてください。
2相続させる不動産に対して相続人が複数存在する
もしも相続人が複数いる状態で、遺せる財産が不動産1つだった場合、当然1つを複数に分けることができないので複数人が共有名義で所有することになります。この場合は単純に複数人で同じ不動産を所有しているということになるだけですが、厳密に遺産分割を行う場合は不動産を売却後に売却益を人数で割って分ける必要があります。
3不動産を遺しても相続人が使わない可能性を考慮する
もし、相続人とあなたが離れて暮らしていた場合、誰も住んでいない家を相続で遺すのは相手にとって負担になる可能性があります。誰も住んでいないのに固定資産税だけかかり、遠くに住んでいるため、空家の管理もできません。空家の管理がされないと庭木は荒れ放題になり、人の手が入らないことで廃墟化する恐れもあります。それでも売却できれば楽になりますが、遠方に住んでいるとそれもなかなか難しいものです。
このような事態を想定して、相続人にはどうしてほしいかを事前に確認しておくとよいでしょう。
4借金などの負債を確認する
借金などの負債も、遺産とともに相続人に相続されます。このような負の遺産は相続放棄することで相続しないという選択を取ることも可能です。しかし、相続放棄をすると借金だけでなく、全ての財産の相続権を放棄することになります。家族のために遺すはずだった家が、借金のため他人の手に渡ってしまう可能性があるのです。
例えば家が1,000万の価値があり負債が3,000万として、相続財産のうちプラスの1,000万円分の負債だけを相続する限定承認というやり方もあります。この場合、相続人が1,000万の貯蓄があれば家を売却せずに済むということになります。しかし、生前に家の名義変更を行っていれば、相続人は1,000万円の負担をせずに贈与税の支払い分のみで済みます。このような事態も想定して、負債も含めてキチンと資産を洗い出しておくべきでしょう。
生前整理は家族のためでもあり、自分のためでもある
生前整理は遺される家族のために行うものだとこれまで説明してきました。しかし、これは結果的に自分のためにもなることです。身の回りの整理をすることは結果的にどこに何があるかを把握しておくことに繋がりますし、家の中が物であふれて片づけられないといった状況も防げます。自分の資産を把握することにも繋がりますし、これからの人生の計画も立てやすくなるのではないでしょうか。
歳をとってから慌てるのではなく、できることから少しずつ、できる時にコツコツとやっていきましょう。